セクハラ裁判例紹介
派遣社員に対するセクハラ行為、派遣先は使用者責任を負い、慰謝料の支払いを命じた。
女性の派遣社員が、派遣先工場(和洋菓子製造会社「味覚糖」の奈良工場)の上司からセクハラを受け、抑うつ神経症を発症したとして、派遣先会社には不法行為に基づき、派遣元会社については使用者責任に基づき、休業損害、治療費、慰謝料など約700万円を求めた事案。
裁判所はセクハラ行為を認定し、派遣先会社の上司に対する使用者責任を認め、慰謝料77万円の支払いを命じた。一方、派遣元会社に対する請求については、派遣社員に対するセクハラの対応策を講じていたとし、労働契約上の信義則違反はないとし、棄却した。「奈良地裁判決(平22.6.15)」
本事案の派遣元会社は、派遣社員の心身の健康状態を把握し、意見を聞く体制を整えて、セクハラを未然に防止できる体制を築くとともに、本件セクハラ行為に対しても、適切な事後的措置をとったものと認められ、セクハラの対応策を講じていたから、労働契約上の信義則違反はないとされた。
セクハラ行為を行った上司は配置転換され、その後体調が悪いという理由で休暇をとっていたが、被害者が本訴を提起した平成20年12月に自殺したとのことです。なんともやるせない気持ちになります。
●事業主が雇用管理上措置すべき事項
事業主は、企業の規模や職場の状況に関係なく、職場におけるセクシュアルハラスメントに関し、雇用管理上講ずべきものとして厚生労働大臣が定めた指針9項目の措置を、必ず講じなければなりません。
なお、派遣労働者については、派遣元事業主のみならず、派遣先事業主も措置を講ずる必要があります。上記事案は、事業主が指針に従った雇用管理上の対応を十分にしていれば、使用者責任を免れることになろうという主張を肯定する判例とも考えられます。
あなたの会社では、適切に防止対策が実施されているでしょうか。以下の指針の内容を早速チェックしてみましょう。
指 針 の 内 容
@職場におけるセクシュアルハラスメントの内容・セクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
Aセクシュアルハラスメントの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
B相談窓口をあらかじめ定めること。
C相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、広く相談に対応すること。
D事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
E事実確認ができた場合は、行為者及び被害者に対する措置を適正に行うこと。
F再発防止に向けた措置を講ずること。(事実が確認できなかった場合も同様)
G相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること。
H相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取り扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。
※ 相談窓口の設置、懲戒・ハラスメント管理規程の整備、セクハラ・パワハラ防止セ
ミナーの実施など、具体的な防止体制作り、防止対策の導入・改善についてのご相
談は21世紀職業財団認定のセクハラ・パワハラ防止コンサルタント「山下労務管理事務所」が承ります。
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